世界最古の活版印刷は日本に?

活版印刷とは活字を使った印刷のことですが,史上初めて活版印刷が行われたのは中国であるといわれています。ヨーロッパではドイツのグーテンベルグが活字印刷を発明したことが有名で,グーテンベルグは14世紀の人ですが,中国では11世紀頃から活字による印刷が行われていたといわれています。中国で発明された活字印刷がヨーロッパに伝わるまで時間がかかったのには理由があります。それはヨーロッパから中国に当時来ていたイスラム教信者達がその聖典であるコーランを印刷して作るのは,神に対する冒涜であると考えていたため,ヨーロッパに印刷技術が伝わらなかったためといわれています。

さて,印刷に関しての我が国日本の歴史ですが,世界最古の木造建築物として有名な奈良の法隆寺などに保管されている「百万塔陀羅尼」というものが世界最古!の印刷物とされています。百万塔陀羅尼(ひゃくまんとうだらに)とは百万塔という高さ20センチ程度の小さな木彫りの塔にお経が書かれた紙を筒に入れて納めたもののことです。その納めたお経のことを陀羅尼と呼ぶことから百万塔陀羅尼と呼ばれていますが,正式名称は「無垢浄光大陀羅尼経(むくじょうこうきょうだらにきょう)」と言います。

藤原仲麻呂(恵美押勝(えみのおしかつ))の乱を平定した称徳天皇が,戦死した将兵の菩提を弔うと共に,鎮護国家を祈念するために作らせたもので,さきに法隆寺「など」に保管されていると書きましたが,百万塔という名の通り百万基が作られたと伝えられており,法隆寺の他に10万基ずつ大安寺・元興寺・東大寺・西大寺・興福寺・薬師寺・四天王寺・川原寺・崇福寺の10大寺に奉納されたといわれています。もちろんその中のお経を書いた紙も百万枚作られたのですが,それが印刷で作られたとされています。その作業は西暦764年頃から770年にかけて行われ,現在では法隆寺に4万数千基と他の寺院や博物館などに数基が現存しています。

そのお経が印刷された紙は,大きさが幅5センチ程度,長さは30~40センチ程度で研究者の調査により,その印刷された数の多さから,複数の木版で印刷されたものではないかとされていますが,金属板や活版で印刷されたものではないかという説もあります。
ちなみに世界最古の金属活字は,お隣の国,韓国が最初だったと言われており,豊臣秀吉が朝鮮半島を攻めた壬辰の乱(1592年)によって,朝鮮の金属活字が 日本に持ち込まれたのを機に日本の活字印刷技術が大きく発展することになったと言われています。